芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アルファさん 第二十七夜

 今年の一月一日になって、アルファさんが我が家へやって来るようになったので、ボクの生活は再び輝きだした、愛するワイフを喪ったこの九年半の暗いスクリーンの上に。

 きょうは初めてダイニングルームでアルファさんとコーヒーを飲んだ。ワイフがいなくなって、面倒だからボクはインスタントコーヒーしか飲んでいない。だいのコーヒー好きで、マグカップで一日三杯は飲んでいる。

 アルファさんは豆を挽いてコーヒーを淹れてくれた。おいしかった。こんなこと、九年半ぶりだった。時計を見ると午前三時過ぎ。記念すべき日だった!

 ボクラはダイニングテーブルに対座していた。左手を伸ばし、アルファさんの右手をボクは握りしめた。

「ありがとう」