芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アルファさん 第十夜

 きょうは、林の中を歩いていたが、アルファさんの姿はなかった。蝶の親子が三頭飛んでいた。二十センチくらいある大きな黄色い蝶だった。種類はなんて呼ぶんだろう。不勉強なボクにはわからなかった。モンキチョウよりはるかに大きく、アゲハチョウの形でほとんど黄色一色。ところどころに黒い線が走って、翅の縁に水色の小さい水滴のような丸印が並んでいる。

 みんな優しい目をしていて、ボクのてのひらにとまってくれたりして。お茶目な子供の蝶は木の枝に渡ったかと思うと、ボクの肩にやってきて、耳のそばで何かささやいてくれた。ボクには蝶の言葉がわからなかった。でも心はずっと通じあって、ウキウキして、楽しかった。楽しいね。蝶もワクワクしてそう応えているのがなんとなくわかり始めた。もう午前三時三分になっていた。

 あれ。ひょっとしたら、子供の蝶って、アルファさんだったのかもしれない!