芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

再就職

 直接対応することにした。タマネギを大量にスライスした。再就職をするのならここだ、彼はそんな思いを心に秘めて、タマネギを切り続けた。まだ得体の知れないあいつの仮面を取り外してやる、必ずほんとうの姿をあぶりだしてやる、固く決心したのだった。

 強い信念に支えられて、彼はタマネギをスライスし続けたのだった。やがて部屋いっぱいタマネギのスライスが出来上がっていた。これで再就職は合格だった。もう頭上も見えなかった。完全な闇だった。彼はタマネギのスライスに埋没したまま二度と帰らなかった。