芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

無数で

 網目模様が消えているのがわかった。

 最初、それは微細な黒と灰色の糸で編まれてさながら一枚のダークグレイのスクリーンだったが、まず、灰色の糸だけが溶け、ぽっとり滴になって、落ち、黒だけが残された。網目は少し大きくなり、その向こう側に横たわる物体が見えそうでいて、やはり見えなかった。

 どうだろう。ひょっとしたらわずかの間、私は寝てしまったのかもしれない。黒はすっかり消えていた。黒い滴もあちらこちらでわずかにぽっとり落ちているけれど、もはや向こう側は歴然していた。

 いったい私は何を見ているのだろう。数えきれなかった。あれは何だ。まだ無数で生きているのだろうか。