芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

たそがれの果てに

 なにもかも崩れていくのが、わかった。なぜもっと早く気づかなかったのか、耳をつねってみても、思いあたる節はなかった。

 確かみぞれが降っている冷たいたそがれ時だった。軒をたたいている音が脳裏を鮮明に刻んでいる。パラパラパラリン、パラパラパラリン、目を閉じればそんな戯れ歌が幾度も繰り返されている。パラパラリンパラ、リンパラパラリン……

 いったいどうしたというのだ。ふいに音が消えた。無音のたそがれの中をさまよい続けていた。夜にもならなかった。昼へも帰らなかった。辺りはひっそりと薄闇がもやっていた。既にみぞれは止んでいたが、首のまわりを水滴が垂れ、頭の中は混乱していた。うすぼんやりとして、前後も、上下左右も見えなかった。紫と緑の縞模様がくねくね氾濫していた。驚いたことに、わたしは全裸になっていて、外界と同じく、体全体も紫と緑の縞模様を描いていた。

 このまま夜にもならず、また、昼に帰ることも出来ず、わたしは紫と緑の縞模様になった全身を鞭撻してあなたを探し続けるのであろう。あなた! このたそがれの果てに住む人。