芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

別れの歌

 午前4時頃、まだあかつきからも遠い、闇に沈んだベッドにあお向けに寝転がっていると、ふいに頭の中に音楽が流れてきた。悲しい曲。

 この曲を残しておこうと、寝室を出て、いつもリビングに置いてある練習用のギターを手に、ダイニングの椅子に腰かけた、東側の飾り棚には花々に彩られたボクのワイフの骨壷と遺影。

 寝室の闇の中に流れた音楽の楽譜をノートに書いた。書いていくと同時に、詞も流れてきた。悲しい曲に悲しい言葉。こうしてボクの「別れの歌」が出来あがった。

 時計を見るともう5時を過ぎているので、アニー(13歳のネコ)にごはんを作り、ボクと長男の、ワイフのいない我が家は長男とふたり暮らしだった、朝食の下ごしらえをして、ジャック(11歳7ヶ月のワンちゃん)と散歩に出た。

 もうすぐ夜が明ける。ジャックとご近所の親水公園を歩きながら、ボクはいま出来たばかりの「別れの歌」を吐息のように口ずさんでいた。きょうは10月19日、ワイフが亡くなった7月19日から数えてちょうど3ヶ月がたっていた。