芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

東川絹子詩集「母娘生活」

 ボクが東川さんとお会いしたのはもう30年くらい昔で、東淵さんの運営する「銀河・詩のいえ」だった。もともとボクは詩人や芸術家とお付き合いするのが苦手で、また、こちらから積極的にお仲間に入ろうとはしなかった。だからこの歳になってもひとりぼっちで白紙に言葉を書いてみたりしているが、どういう理由で訪問したのかも知れない「銀河・詩のいえ」で彼女と初めてお会いしたのを、いやに鮮やかに記憶している。

 その後、ある同人誌の関係で合評会の折などお会いしていたが、ボクは詩の会に興味を失って離れてしまったから、もうずいぶん長い間お会いしていない。

 作品集が出来あがるたびボクは東川さんに送っているが、おそらく彼女はボクの作品をどちらかというと嫌悪していたと思う。結局、ボクの作品は光栄にも今日に至るまで誰からもおホメに預かっていないが、それはそれとして、最近書いた「ふたりだけの時間」という作品集をお送りすると、意外にも、東川さんはボクの作品をトテモよかったとホメてくださり、一冊の詩集まで送ってこられた。

 

 東川絹子詩集「母娘生活」(2011年2月20日発行、オリオン社)

 

 この作品の書き方は、これ以前に出された「灰ひときれ」の延長でありながら、出来る限り虚構を廃し、言語による具象世界が家族の愛に包まれて流れていく。ひょっとしたら、人はほんとうの愛を語る時、一切の虚構が崩壊するのかもしれない。東川さんの作品も、「コロンブスのタマゴ」のような作品集から、徐々に虚構が崩れ、身近に存在する真実の愛を語り始めた時、今までとはまったく違った言語作品が完成したのだろう。この作品の場合、言語がただたましいだけを写実したと言って、決して過言ではあるまい。