芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

悲鳴

正午から深夜は生成しないように闇の中から真実の呼び声を聴くのは幻視に過ぎない そっと白紙の上の暗黒を消しゴムで消そう ≪思惟は悲しい すべては遊戯である≫ 訪問者は扉を開けて虚無の写実画を見上げた 眼底には静謐な夜が流れた ≪石が絶望するように窓は絶望しない≫ 磁石もなく群島もなく夜明けもなく あるいは 真実へ連れ去ろうとする北極星もない船乗りの痴夢 巨大なコロンブスの卵の夢よりも寧ろ冷たくなった足の未明の上陸 難破して そうだ 最後の枕もとではすべてが否定されている 眠られぬ男の隣室は死体安置所のようだ 既に暗黒の遊戯に白紙は汚されていた 突然 誰かが踊り場で悲鳴をあげた