芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

親水公園にて その43

言葉が あふれ出ていた

 

とめどなく あふれ出ていた

 

 

 

*九月の終わり。午後零時十三分。快晴。夏日のように暑くはあったが、時折さわやかな風が流れて来た。

 芦屋浜の西南端から堤防越しに六甲山を仰ぐ。子供たちがまだ小さかったころ、私たち四人家族は休日が来るたび、この山でハイキングをして遊んだ。いま、ひとりスマホで山を撮りながら、しばし瞑想に落ちた。…… 

 ……空想や想像の世界ではいざ知らず、いま私が住んでいる芦屋の町の片隅では、言葉から生命は生まれない。いくら言葉を尽くして書き納めても、あなたは決して帰っては来なかった。だけど、書かなければもっとつらい日々を私は送っていただろう。いくら毎日書き続けても、確かに言葉によってあなたがもう一度生まれるなんて奇跡はなかった。けれども、少なくとも私にとって、言葉は涙を表現した。涙以上の涙だった。