芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

親水公園にて その35

 耳底で皮をむくような音がしている。ズルズルしたり、ズルリとしている。なんだか全身の皮がむかれているんじゃないか、そんなイヤな気持がして、わたしはベッドから体を引きはがした。午前二時。スッカリ頭が冴えてきた。手持無沙汰だった。勉強机に向かって、こんな他愛ない言葉を書きなぐっていた。

 

あなたが いれば

毎日 楽しくて

過去も 未来も なかった

まして あなたが知らない思い出がわたしにあるなんてこと

忘れていた

 

あなたが 我が家にいない

この八年間

特にここ数か月

あなたとは無関係な

さまざまな思い出が出てきた

とりもなおさず 嫌な思い出が

二度と思い出したくない思い出が

 

心の中から

ゾロゾロはいずり出してきた

忘れていた 嫌な思い出

顔をそむけたくなる思い出

もう取り返しがつかない思い出

すべてが心に記録されていた

 

こんな悪い記録を 

この世から消滅させるためには

その一 わたし自身がこの世から消滅する

あるいは

 

その二 もう一度 あなたが我が家に帰って来る

あるいは

 

その三 思い切って悪い記録に謝罪する

ごめんね そう言って

 

 

*急に秋が深くなってしまった、そんな気配さえした、まだ九月の半ばを過ぎたばかりだが。朝などは、半袖シャツならもう肌寒いくらいだった。

 写真は、お昼ごろの親水公園。川から白鷺が飛び立つところをスマホで撮った。小さくて見づらいけれど、どうぞ目を凝らしてください。