芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

後藤光治個人詩誌「アビラ」11号を読む。

 この詩誌を読んだ。

 

 後藤光治個人詩誌「アビラ」11号 編集発行 後藤光治 2022年9月1日発行

 

 まず、この詩誌の特色の一つである巻頭に「ロラン語録」が置かれている。

 全体の構成も従来通り、まず書者自身の詩作品、今号は六篇の作品が発表されている。そのうち一篇は既発表のものである。

 次に「ロマン・ロラン断章」。「ジャン・クリストフ」の紹介と、「清水茂断章」では清水茂の六篇の詩を中心に若干のコメントが添えられている。

 「詩のいずみ」では、荒地派の中心的存在だった鮎川信夫の「死んだ男」が引用され、その流れの中で詩人田中詮三が論じられ、この詩人の詩作品が四篇紹介されている。

 最後に、「鬼の洗濯板」では、詩を「隠喩」を中心にして理解する著者の立場が論じられ、その典型として石原吉郎の「フェルナンデス」が引用されていた。

 ところで、著者の詩作品六篇のうち「エナシラッシタケ」を除き、詩の言葉の底辺は、過去の故郷の村を中核にしてその周辺から発語するものだった。過去といっても、おそらく敗戦後いくばくもない昭和二十年代末から三十年代末あたりの時間が濃縮されているのだった。いわば、その時代の村を中核にした神話だった。時間の美を表現せんとする抒情的リアリズムとでも言えばいいのだろうか。