芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

請求書

 久しぶりに豆腐が食べたくなった。

 豆腐といえば、もう六年前に亡くなってしまったが、ジャックがとても好きだった。そもそも、八年前に亡くなった私のワイフがプリン代わりにそれを彼のデザートにしていた。彼に過剰な塩分を与えることを彼女は恐れたのだった。従って、ワイフの没後、二年余り、そばでオスワリして見あげているジャックのために、私が豆腐をお皿に盛っていた。

 その後も、六年間、私はお皿に豆腐を盛り続けた。リンゴとバナナとチーズを小片に切って、その周りを飾っていた。ダイニングルームには、もちろん、ワイフやジャックの姿は見えなかったけれど。

 きょうの未明、三時ごろ、請求書が私あてに来た。五万五百円。備考に豆腐代として、そう書いてあった。