芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「日本の昔ばなし(Ⅲ)」を読む。

 引き続きこの本を読んだ。

 

 「日本の昔ばなし(Ⅲ)」 関敬吾編 岩波文庫 2002年8月26日第52刷

 

 これで全三冊を読み終わった。今回は、有名な「一寸法師」、「浦島太郎」、「さるかに合戦」など、合計百十二篇の昔ばなしが収録されていた。さまざまな動物の話が多く紹介され、また、笑話が続いた。笑話を読んでいて思うに、昔ばなしは子供たちに聞かせるばかりではなく、当たり前だといえば当たり前だが、ほとんど猥談と言っていいものもあり、大人の楽しみでもあった。テレビもラジオもステレオも、ましてパソコンやスマホなんてない時代、文盲率も高い庶民の中で語りつがれていたのだった。

 巻末の「研究書」、「資料」の一覧を見ていると、発行日は大正末期のものもあるが、大半は昭和初期から敗戦までであり、戦後は主に柳田国男や関敬吾を中心にして研究・集成されていったようである。ただ、この文庫本の初版は一九五七年、昭和三二年であってみれば、その後の研究や資料の変遷が言及されていないのは致し方なかろう。

 ところで、日本の昔ばなしが積極的に収集され始めたのが昭和初期だとすると、明治以降の西洋文化の強い影響から一線を画して、日本への回帰へと傾斜していく過程でその当時にはまだ庶民の中で生きている口承の物語の再発見・再評価がなされたのであろう。貴重な資料だった。