芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

朝六時半、ホラ、きょうもカアカアが!

 六月になって、夜明けはいよいよ早くなった。朝の六時半だと辺りはもうすっかり明るくなっている。我が家のウッドフェンスに止まっているカアカアも、ダイニングルームのガラス戸越しにハッキリ見えた。

 きょうは朝から洗濯をして九時前に二階のベランダで洗濯物を干していると、また、ウッドフェンスの上にカアカアが立っている。

 私は平日だけだが毎日休まず仕事に出かけている。朝九時半ごろに次男が車で迎えに来る。ワイフを喪ってからずっとそうしている。阪神芦屋駅の近くのビルの三階が事務所だ。自宅から車で十分足らずだった。

 仕事を終えて余程のことがない限り午前十一時二十分ごろ帰宅するのだが、私が帰るとすぐに、また彼が来た。午後二時半ごろにも遊んだ。最後は午後五時過ぎに来た。一年半もご無沙汰していたが、やはりとても仲良しだった。愛は決して消えていなかった。

 カアカアは鳴かない。きのう、一回だけ、「クワア~」、静かな声でそうおしゃべりしただけだ。あとは身振り、特にくちばしの微妙な動きとまなざしで私に語りかけてくる。

 午後四時。「カアカアと、このひとときを」第二部で登場した夫婦ガラスのうち、妻ガラスがやって来た。このところ、だいたい三日おきくらいで、一日に一回、朝の七時半か午後四時ごろに妻ガラスがひとりで食事に来る。口一杯ほおばって、そそくさと帰っていく。

 この時期はカラスの産卵期で、みんなその方が忙しくて、気もそぞろではないだろうか。数日前も我が家のすぐ前で一羽の女ガラスに二羽の男ガラスが呼びかけて、エスコートしていた。おそらくそのスキを狙って、身障者のカアカアは我が家まで足を運んで、昔なじみの私と遊んでくれるのだろう。