芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

無縁の人

 昼過ぎ、いつものように芦屋浜の散歩から帰ってくると、我が家の庭に、おそらく私と同世代の七十代半ば前後だろうか、男と女がいた。

 男は前庭の西側の隅に立って、ややうつむき加減の姿勢で、スマホのようなものを見つめている。右手の人差指をあわただしく上下させているが、我が家の主人、この私の存在にまったく気付いていない。

 女は男より二メートルくらい東寄りで、男の方角、西に向かってしゃがみこんで草むしりでもしているのか、私の方からは丸くなった背中しか見えない。

 彼等は私の家に引っ越してきたのだろうか。私は我が家とはもう無縁の人になったのだろうか。