芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

カメさんが冬眠からめざめた!

 春だというのに、冷たい日が続いていた。きょう、やっと、春らしい春が来た。

 私は少し不安だった。この七年余りの間に、妻も金魚も愛犬も愛猫も失った私には、三十三歳のイシガメさんが最後のパートナーだった。カメさんの寿命は二十年から三十年と聞く。だから、毎年、あったかい日がやって来ると、私の心は多少不安になるのだった。今年は大丈夫だろうか……。

 この冬も、カメさんはいつものとおり、腐葉土の中で眠っていた。私は彼を取り出し、水でキレイに洗った。頭が少し動いた。オオ!春のめざめ! やがて彼は、頭も手足も甲羅から突き出して、門から歩道に向かって歩き出した。

 今、カメさんは庭の小さな池で、首をもたげて、三十四年目の春を見つめている。

 

*写真は、今日お昼過ぎ、冬眠からめざめたイシガメさん。