芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

詩誌「オリオン」37号を読む。

 東川さんから詩誌が送られてきた。

 

 「オリオン」37号 松川紀代・東川絹子編集 2021年8月15日発行

 

 まず、松川紀代の詩作品は五篇。その内、「椿」、「午睡」、「魚の目」、「あと始末」の四篇は、余計な飾りを脱ぎ捨てて、たださりげなく書く、そんな文章の断片だった。昼下がり、ひとりで、薄くて渋いお茶を飲んだ気持がした。だが、最後の一篇、「祖母」は少しおもむきが違った。あくの強い笑いを誘う詩ではあるが、根底には祖母への強い著者の愛情があった。この詩誌に収められた松川のエッセイ「鉄線の花」を併せて読めば、その辺りの心のあり様がうかがえるだろう。

 東川絹子に関していえば、「綿菓子」は絶品と言っていいだろう。この作品以外に東川は、「雲の指」、「我」の二篇の詩を発表しているが、それはそれで悪くはないが、「綿菓子」はいわば幼女思慕詩篇とでも言っていいのか、味わい深い作品だった。二篇のエッセイ、「老いの初心4」、「母と三池争議」は著者の心を具象的に表現して、透明感がある。

 森沢さんに何があったのかは知らない。しかし、最近の「オリオン」に発表していた作品を読んでいただけではあるが、一種異様に鬼気迫るものを私は感じていた。そして、この号の「編集後記」に、東川さんが、「森沢さん、お帰りなさい」と書いているのだった。

 それはさておき、森沢友日子は五篇の詩を発表している。「楽園」、「夢の中で先生は」、「渚で」の三篇に共通しているのは、さまざまな浮遊感覚を言葉にした作品群だった。夢うつつの宙に浮いた世界だった。「青空の下」、「薄闇の町」も不思議な情調で編まれた言葉だった。五篇すべてに共通しているのは、「人知を超えた生命の源」(「薄闇の町」第四行)から帰ってきた言葉だった。

 

 薄闇の中の仄明り

 私はここに立っていよう

 出会った人とあいさつし

 互いに手を振り別れよう(「薄闇の町」最終連)