芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

夏を忘れる

 この二三日、夜明け前は涼しくて、すっかり夏を忘れてしまう。

 午前五時前、我が家の玄関から門までの小さな空間に、ほとんど藍色に近い、薄い闇の空がある。

 日の出前の東空にオリオンが最後の光をつつましやかに置き、その下の低い空には、シリウスが出ている。

 もう秋だった。左に眼を移せば、北東の空に、三日後には新月になる細い月が残っていた。