芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ローザ・ルクセンブルクの手紙

 きょうが最終回である。今まで、ローザ・ルクセンブルク選集全四巻、資本蓄積論全三冊を学んできた。芦屋芸術主催の「ローザ・ルクセンブルク読書会」第八回最終回の教材は、これである。

 

 「ローザ・ルクセンブルクの手紙」 ルイーゼ・カウツキー編 川口浩、松井圭子訳 岩波文庫(昭和45年2月10日第12刷)

 

 一般的に言って、書簡まで文庫本になっている政治家・哲学者・経済学者はほとんど皆無だろう。ローザの場合、革命的政治家だったと結論してもいい。彼女のアジテーションには目を見張るものがある。あの当時、彼女の演説を聞くためにおおぜいの人が足を運んでいるが、聴衆に忘れがたい言葉を残したに違いない。

 もちろん、哲学者でもあった。晩年、獄中で書かれた「ロシア革命論」では、レーニンの一党独裁論を批判し、スターリン主義の到来を予見している。また、資本主義をこのまま放置すれば第一次世界大戦よりさらに過酷な世界大戦がやってくると分析し警告している。彼女がこれを執筆している時、まだ第一次世界大戦は終戦していなかったのだが。

 あるいはまた、既にこの読書会でも「資本蓄積論」で学んだとおり、一流の経済学者でもあった。また、獄中で、ロシアの文学者コロレンコの作品をドイツ語に翻訳し、序文を書いているが、彼女一流の立派な文学論でもあった。しかも彼女の重要な論文を獄中で完成させている!

 暗殺されるまでの四十七年の生涯、さまざまな場所で光り輝いてこの世を去ったローザではあるが、その人柄を偲ぶには、やはり手紙だろう。猫や小鳥を愛し、花や木、自然をいつくしむ彼女の姿。獄中の身でありながら、病気の友達を悲しみ、第一次世界大戦で戦死した友を悼み、友達や遺族に手紙で慰めの言葉を送り、自分は静かで快適な場所に住んでいてとても仕事がはかどっている、明るくそう語りかける。仕事とは言うまでもなく「ロシア革命論」等のさまざまな執筆活動であり、時には檄文も書いている。「戦争はやめろ!」。 

 彼女は、獄死かそれとも虐殺されるか、そんな自分の死に様を明確に自覚して一日一日を生き生きと暮らしている。なんというか、ちょっと突き抜けていて、ボクのような孤独で陋劣な老人のよく理解するところではない。ぜひ、すすんで手にして欲しい。

 さて、これでローザ・ルクセンブルクの読書会は終了する。まだ読み残した重要なテキストがあるが、今、ボクの手もとにはない。来年の一月十五日、ローザ・ルクセンブルクが虐殺されて百年を迎えるが、その時までには、テキストを入手しておく。すなわち、「経済学入門」、「資本蓄積論再論」、「獄中からの手紙」、以上三点。ボクのような歳になって、こんなことを言うのは鬼が笑って気が引けるが、来年のローザが暗殺された日までには入手して、読書会を再開する。さらば、また会う日まで、さらば。