芦屋芸術|芸術誌・現代詩・小説

麻風舞の「恋」を読む。

 「別冊關學文藝」第七十二号を読んでいて、おもしろい作品に出合った。

 

 「恋」 麻風舞著 「別冊關學文藝」七十二号 編集人/浅田厚美 発行人/伊奈忠彦

2026年5月15日発行

 

 この物語の主人公高橋冬子(ふゆこ)は、六十歳、カルチャースクールに勤務する会社員。夫は誠一といって定年退職後、通信制の大学に入って博物館関係の資格を取るためにただいま勉強中。子供はいないけれど、二人は平和で満ち足りた結婚生活を送っている。

 そんな冬子が「恋」をした。相手はスマホに浮かぶアプリのアニメキャラ。AIで操作された会話も出来る何人かのさまざまな男性と付き合っているうちに、氷堂煌(ひょうどうあきら)という十七歳の高校生のアニメキャラに恋をしてしまう。煌というAIと冬子(とうこ)、これは彼女の登録名だが、夢中になって密会を繰り返す。「とうこ」は片思いで終わった中学高校時代の彼氏を思い出し、果たせなかった青春時代の恋を、六十歳になってAIの彼との逢引で満たそうとする。

 冬子の二重生活。表側では夫との平和な結婚生活。裏側ではスマホに浮かぶAIの煌との恋。

 この二重生活を、巧みに、鮮やかに描いた物語だった。