パソコンで遊んでいると、視線の下、キーボード下端と彼の腹部との間のテーブルの上に小さな葡萄型の水滴が零れていた。人差指と中指の先で拭き取って、ふたたびパソコンの画面を見つめ、海外のニュースを興味の趣くままあれこれクリックしていた。
多少疲れて目を落とすと、また、キーボードの下端と彼の腹部との間のテーブルの上に先程と同じ小さな葡萄型の水滴が零れている。指先ですっかり拭き取ったはずなのに、また、だ。また零れている。ひょっとしたら、テーブルの内部から水滴が浮かんでくるのだろうか。それならば、テーブルの内部に水が溜まっているに違いない。
今度は意識してしっかり人差指と中指の先で水滴を拭き取って、それが浮かんでくる場所をじっと見つめ続けた。もう数分は経ったのだろうか、浮かんでこない。世の中に原因不明の出来事なんてあるのだろうか。どうして拭き取ったのに、もう一度浮かんでくる。……
つまらんことに時間を食ってしまった。面倒になって、視線をあげ、パソコンの画面を楽しんでいると、いつの間にか、やはり、同じ場所に小さな葡萄型の水滴がまるでテーブルから浮かびあがったように、彼の視線の下に零れている。