芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アルファさん 第十三夜

 未明に歌を歌っていた。

 ハスキーでときどき音程も狂っていたけれど、ボクは魅入られて耳を傾けていた。どう言えばいいのか。夜が明けるまでこのままでいて欲しい、叶わない願いを込めて。

 もっと狂っていいと思った。アルファさんとだったら、もっともっと狂い続けたかった。

 

 午前三時二十八分。声が消えた。でもまだ頭の中では歌っていた。

 

 ふわりん ねえ下を向いて

 さわふる さあ空を仰いで

 ぬめねち ねえ指からませ

 ぽっちり さあ見つめあい

 

 ふわりん さわふる ぬめねち ぽっちり