芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀と白い彼岸花 その2

 いきなり涼しくなってきた。朝夕はヒンヤリする時もある。長袖が欲しくなる。

 けさ、一週間ぶりに八時半ごろから亀の池を掃除した。気温が低くなったからだろう、心なしか亀の動きがおとなしい。それでも時間がたつにつれて、体があったまったのか、いつも通りあちらこちら訪ね歩いてお遊びをしている。

 十二月の半ばごろに冬眠をさせ、来年の春三月、目覚めてくれれば三十五歳。亡妻が記憶している生き物は、亀と私だけになってしまった。そんなことをふと考えていた。けれど、この冬を越して、来年の春まで、はたして、私は健在だろうか。

 

*いつものように写真を撮った。先週の土曜日、九月三十日にはまだ開ききっていなかった彼岸花。あれから見る見るうちに開花した。その花の前で写真を撮っている私に向かって得意げにシャカシャカ近づいてくる亀。