芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

送り火

 夕方、また芦屋浜から総合公園を歩いた。西陽が強く射していた。昼間よりおおぜいの人が浜で遊んでいる。十代、二十代の若い人が多い。私のような年配の人は見かけなかった。夕方といってもまだとても暑く、外出は控えているのだろう。

 八月十六日。盆の終わりは近づいた。思えば、私と妻は無宗教だった。彼女が亡くなっても宗教的な通夜も葬式もやっていない、命日や盆の宗教的儀式も。そのうえ、彼女の骨ばかりか、愛犬ジャック、愛猫アニーの骨も、ダイニングの東窓の飾り棚に今も花や写真に囲まれて置かれている。私は毎日彼等に話しかけている。

 いつとも知れず、九年前までえっちゃんと愛犬ジャックといっしょによく歩いた小道をたどっているのに気づいた。私はひとりで歩いているのが不思議だった。

 

 そうだ すべては不思議だった

 あなたと出会ったのも

 あなたと愛しあったのも

 この道を ジャックといっしょに歩いたのも

 そして 愛しあったまま別れたのも

 

 私にとって

 愛は決して永遠ではなかった

 命そのものだった

 

 

*写真は、えっちゃんとジャックとよく歩いた総合公園の小道。