芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀とたわむれて

 昨夜、友達とJR芦屋付近の飲み屋を梯子した。帰宅したのは十一時。パソコンのメールを見て、ベッドに横たわった。

 寝坊してしまった。もう五時を回っていた。いつものように長男と私の朝ご飯を作る。ダイニングの東窓の棚に置かれた亡妻と愛犬、愛猫の骨壺の両側を飾っている花の手入れ、水替えを済ませて、庭へ出た。

 きょうはどうしてもやらなければならないことがあった。亀の池の掃除。庭や門前の道路を掃き清めた後、八時半ごろから始めた。今週の木曜日にはやる予定だったが、なんだかんだと忙しく、先送りになっていた。亀の住環境が悪化するのではないか、気になって仕方なかった。

 今年は例年になく暑く、朝のこの時間だと、庭掃除だけで汗だく。池の掃除が終わったのは九時十分ごろ。もう全身、汗まみれ、べちゃべちゃ。亀をバケツに入れておけば、池掃除だけに専念できる。だがわたしは週に一回の池掃除の時くらい、彼を庭で遊ばせている。あちらこちら、歩き回る。時に、一気に走り出すと姿を見失う。ウッドデッキの下か、樹の影か、あるいは道路に出てしまっているのでは……探すのに一苦労。だから池の掃除をしながら、しょっちゅう彼の動向を探っている。どこか遠くへ行きそうになったら、立ち上がって、追いかけて、つかまえて、私の足もと近くへ置く。また、彼は庭をうろうろする。視界から消えようとする。あわててつかまえて、私の足もと近くへ。

 

 三十四年間

 池のお掃除をしてきた

 どこかへ遊びに行こうとする亀を

 つかまえては

 わたしの足もとへ置いた

 

 

*写真は、亡妻が鉢植えから育てた百日紅の前を歩く亀。