芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀、そして秘密の鍵。

 けさは近所の共用の花壇の水やりをしたため、出勤までの朝は忙しくしていた。だから今日の午後一時頃、炎天下、覚悟を決めて、亀の池を掃除した。週に一度くらいは掃除をして水替えをし、池の中で組み立てられた五個のレンガの島の汚れを落とし、亀の甲羅を綺麗にしてやる。だいたいこんな作業を真夏のまっ昼間、おおよそ四十分、特に四十五年ぶりの暑さといわれている昼日中、やはりそれなりの覚悟は必要だった。

 ならば、この覚悟はどこから出て来るのか? 答えは簡単である。亀への愛からこの覚悟はやって来る。彼に一日でも長くこの世の生活を楽しんで欲しい、その一心からこの覚悟はやって来るのだった。

 

 愛は苦しみよりも強い

 ずいぶん昔から わたしはこの秘密の鍵を手にしている

 

 

*写真は、甲羅を綺麗に洗った後、ベランダの洗い場で遊ぶ亀。