芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

創世記第二章

疲れていた。

しばらく休憩しようと思った。

しばらく、ちょっとだけ、そう思ってから、もう九年の歳月が流れていた。

しかし、まだ疲れは取れなかった。

九年間、何もしないで、ベッドに横たわったまま、目をつむっていたり、じっと天井を見つめていた。休憩している間に、徐々にわたしの全身は人の形をした黒いカビになって横たわっていた。

時折、カビは立ち上がってトイレに移動した。台所の蛇口から水を飲むと、くちびるの形をした黒カビだけが濡れていた

カビは一日中、無言だった。

だがしかし、彼は孤独ではなかった。自分の体から毎日少しずつカビをはがした。九年間、ダイニングテーブルの上でその黒カビを使って女の体を製作し、もうほとんど出来上がっていた。ただ、左腕と右脚は未完成だった。