芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

アニーについて

 14年前、近所の奥さんからボクのワイフは子猫をあずかった。お友達が飼えないからといって子供が5匹の子猫をあずかってきて、うちではワンちゃんもいるし、てんやわんや、ねえもらいてがみつかるまで1匹だけあずかってくれない、とそういうことで、かわいいでしょ、子猫をだっこしてる。あずかったら、たしかボクはそう反論した、ぜったいはなせなくなるよ、だから、いますぐ返したら、だったら、ワタシが飼うからいいじゃん! とんちゃんに、つまりボクのことだが、迷惑なんてかけないんだから! とても厳しい口調で。

 この子猫をワイフはアニーと呼んだ。だが、ごはんやトイレの後始末はほとんどボクの仕事だった。そうこうしているうちに、去年の7月、ワイフはこの世を去った。ボクは毎朝彼女の部屋をちょっとのぞいているが、姿も形もない。えっちゃん。約束が違う。これからは、他の事はなんでもするから、いますぐアニーの面倒だけはみてくれ、こんなひとりごとをノートに書いているボクの膝の上にアニーが。