芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

弁当とその手紙

 弁当が三つ。二つはダイニングテーブルの上。もう一つは流し台の右端の上。不思議なことに、これらの弁当には意味が、それもやや政治的な意味があった。

 それぞれの弁当には、丁寧な字で書かれたレターが添えられている。私は、まず、テーブルの上のふたつの弁当に添えられた二つの手紙を読んだ。なんだかパズルめいた手紙で、薄桃色の和紙にちりばめられた言葉の組み合わせの中から、その表側ではなく、裏側に隠されている意味を解読しなければならなかった。そしてそれはこの町の今回の選挙に関する不正を暗示していた。のみならず流し台の右端の弁当に添えられた青い手紙は彼等の巧妙な手口にまで及んでいた。

 詳細を語るわけにはいかない。真実を語るものは、必ずいつか逮捕される。あるいは、ひっそりと消される。従って、私は差し障りのない程度の概略だけを語って、口を閉ざすことにしたい。

 中央から遠く離れた一地方の小さな町。こんな町にまで既に中央の腐敗とその破局がやって来ていた。いずれ、ここ十年ないし二十年を経て、この小さな町も腐敗で崩れ、破局する。それは見えない詐欺から始まっている。しっかり目を据えてこの三つの手紙の言葉の組み合わせの中から破局とその悲惨を読み取って欲しい。

 言うまでもなく、三つの弁当も既に腐っているのかもしれない。

 

*写真は、きょうのお昼ごろ、防潮堤の東南端の東屋付近から眺望した芦屋浜と六甲山系。