芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

芦屋二十年短観

 きょう、四月二十六日、芦屋のこの家に越してきて二十年になる。

 そもそもこの家を見つけたのは妻悦子であり、彼女は八十を超えたばかりの私の母の老後を見るため、この家を買った。母も喜んでいたが、転居前にアクシデントがあって兵庫医大に入院、五月三日に永眠した。母は一日もこの家に住んでいない。

 それでも、私と妻は素晴らしい晩年をこの家で暮らすことが出来た。なぜ晩年という言葉を使うかといえば、九年前の七月十九日、膵臓がんで妻はこの世を去った。亡くなる一か月余り前までは彼女はまだ元気で私と一緒に遊び歩いていたので、事故に近い急死だった。確かに、私達はふたりだけで遊ぶのがとても楽しかった。

 私は愛を、四十三年同じ屋根の下で生きた妻悦子から学んだ。特に、芦屋では愛と、そのうえ死も学んだ。

 

*写真は、和歌山のドッグホテル、パートナーズハウスユアサのプールで泳ぐ愛犬ジャック。2014年5月17日。私の誕生日が5月18日なのでそのお祝いもかねてこのホテルに泊まった。この二か月後、悦子は旅立った。