空の下から雨が降りしきる初夏の朝
七月の雨のしゃあしゃあ鳴ってる白い線を透して
小さなあぱあとの二階の窓から
街角をずっと曲がりきるまで
いつものみっつの有明の星が
手を振っている
あれは星だおかあさんと子供たちだ
黒光りしてならんでる屋根瓦の上の
長方形になった二階の窓
おかあさんと子供たちは水上で笑ってて
ちょうどおとうさんはこうもり傘の下の
あい色のくれよんでぬりたくられた水底を歩んでる
すると稲妻がぴかぴか光ってきて
あたりはみいんな画用紙の中の
子供の絵になってるんだ
お仕事よお仕事よと
七月の白い雨の絵本を透して
おとうさんの背中がすっかり見えなくなるまで
誰のでもない有明のみっつの星が
差し出された花たばのように
むっつの手を振ってるんだ
手を 日々の手を
*一九七九年七月十八日、日記帳に書かれた詩。私は三十歳だった。