芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

川合先生、ありがとう。

 川合先生からメールが来た。彼は兵庫県立芦屋高等学校時代の担任教師で、専門のフランス語ではなく英語を教えていた。私が卒業してしばらくして、母校の東京外大に帰り、最後は郷里の岡山大学で教鞭をふるい、退官して現在に至っている。

 高校在学当時、私は詩を書いたり、教科書はまったく読まず詩集や哲学書なんか読んで、エレキギターを弾いてバンドを組んだりして、世に言う所謂「不良少年」だった。しかし、川合先生もフランス文学に精通していたのだろう、この不良少年に好感を持って接してくれた。

 あれから五十六年近い歳月が流れた。私はこの二三年、「芦屋芸術」や私の出した詩集を彼に送っている。そのたび、メールで講評、また、ワインが返ってきた。

 このたび、新著「恋愛詩篇 えっちゃんの夏」を送ったところ、それなりの評価が感じられる好意的なメールが来た。また、私が入力した誤字を、それほどひどい誤字ではなく読めなくはない、そういう主旨の返事が来た。

 半世紀以上、時が流れても、教師と生徒の縁は残されているのだろうか。作品の創作からワードへの入力、表紙・裏表紙・目次等、すべての編集・校正をしPDFに変換して印刷会社に印刷・製本を依頼している。紙の選択まで私は自分でやっている。ビジネスでも趣味でも自力でやるのが、私の人生、そう言って差し支えなかった。だから、私は今回、本の誤入力を犯したことで自分を激しく責めていた。しかしこんな「不良少年」だった生徒が入力した誤字を、気にするな、彼はそう言って慰めてくれた。

 川合先生、ありがとう。

 

*写真は、今朝九時ごろ、曇天の下、近所の親水公園で咲いている桜花。