芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

書くことは、命を吸い取ることなのか。

 命を吸い取っていく鏡。昔、そんな話を私は聞いた。毎日、鏡に映っている自分の姿を見つめていると、鏡は彼の命を吸い取っていく、そんな話だった。言わば、鏡は吸血鬼だった。

 言葉は鏡だった。書くことは、自分を言葉に移すことだった。言葉は彼にとって、吸血鬼なのだろうか。書くことは、彼の命を吸い取ることなのか。しかし、書くことによってナニモノも再生しない、無償の行為ではないか。命だけをすり減らして、後にヌケガラを残して。

 

*写真は、今年の三月二十二日お昼ごろ、芦屋総合公園の西南端にあるアーモンドの花が咲く小道。春になれば、亡妻とよく歩いた道だった。