芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

なにをおしゃべるするために

なにをおしゃべりするために

亡妻はやって来たのだろう

雪の降り積もった

運動場を

六十数年前の

バラックに近いボクの小学校の校舎

だがもう何かの展示場か事務所に変わっていたが

その建物に向かって

車を飛ばした

久しぶりに亡妻の運転する

助手席に座って しゃべり続けていた

えっちゃん そんなに飛ばして

スリップして 事故らない?

大丈夫よ まかしといて

なんて そんなコトバを耳にして

 

駐車場にはボクラの車 一台きり

 

建物の中を二人でうろついたり

片隅で まだおしゃべりしている

駐車場は満車になっていた

数人の男が袋状のものを手に下げ

話しかけてきた

えっちゃんの姿はなかった