芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ソーセージ

少年の時に見学した工場に

いま わたくしは立っている

おとうさんに手を引かれて

ここで毎日仕事してるんだよ

初めて見学したソーセージ工場

わたくしはまた仕事の都合でここに来た

あの時の建物の面影は

破片すら残されていない

当たり前じゃないか ずいぶん昔の話じゃないか

もうすっかり様子は変わってしまった

ただ 次から次へと生産される

桃色のソーセージだけは

いやに記憶に焼きついている

終了のベルが鳴った

今では同僚たちといっしょに笑いながら自社製ソーセージをかじり

仕事の喜びと

それにともなう苦しみをわたくしたちは語りあい

わかちあって

毎日 家路を急いでいる

おとうさん!