芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

眉間

 洗濯機だとばかり思っていた。

 衣類を投げ込んだ時、思った以上に底が深いのに気が付いた。そればかりではなかった。穴は垂直な小さい空間ではなく、かなり深く、横にも広がっていて、果てが見えなかった。薄暗く、荒れ果てた、広大なゴミ捨て場に違いなかった。さまざまな汚れた下着、破れた袋、そこからネトネトした生ごみや得体のしれない骨や手足が散乱していたが、そんな腐敗した生活の断片が辺り一面に転がっていた。おそらくまだ三歳くらいの男の子だろうか、ゴミダメの上を滑るように移動していた。彼はロボットだろうか。いったい誰が操作しているのだろうか。

 不意に彼が穴の底からジャンプして、私に飛びついてきた。顔面に彼の頭がぶつかって来るのがわかった。私の眉間から血が流れていた。