芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

野間明子の「襤褸」

 友人山中従子の縁で、こんなステキな詩集を読むことが出来た。

 

 「襤褸」 野間明子著 七月堂 2022年7月17日発行

 

 この詩集の特徴は、昔綺麗な濃い空色だった薄紙がいまや変色して灰色に汚れ、くたびれきって、腐れ果て、ネチャネチャ引き裂かれていくような疎外感、挫折感が漂う言語連続体だった。

 全体が三群に分かれている。上述した特徴はとりわけ第一群の六篇の作品に濃厚だった。深紅、純白、こがね、この原色の微細な粉末が吹き荒れ、まき散らされ、ついに色褪せて不快な耳鳴が夜に騒いでいる。それは孤独な闇が語る言葉だった。といって、例えば第三群の「その名前を知らない」、「杞憂」のこれ以上行き場のないヴィジョン、「乾期の終り」、「浸水」にみられる洪水幻想、ポッカリ空いた奈落へ転落する一歩手前に踏みとどまっている著者の受苦の姿勢が垣間見える。

 私見になるが、読み方としては、まず巻頭に置かれた作品「PASSION」から始まり、順次読み進んで最終作品「萌芽」まで至ると、再び巻頭に還って「PASSION」を読み終えて、静かにこの詩集を閉じてもらいたい。そして瞑目する。はたして読者よ、あなたの眼底に言いがたい疎外感、挫折感が漂ってきやしないか。

 

 咲くこととはこのことか 取り返しもつかず破れることか(本書13頁、「PASSION」から)