芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

亀と白いキキョウ

 けさ、前から気になっていた庭の鉢に生えた雑草を抜いて、その勢いで池の掃除を始めた。掃除をやっている四十分前後の間、亀は庭をウロウロして楽しんでいる。どこかに入り込んでしまうと行方不明になってしまうし、それよりも、道路に出て車につぶされる危険があり、掃除をしながらも私は常に彼の行動を観察している。「そっちはダメ!」、そう言って立ち上がり、私の身近に彼を連れもどす。最後に体を綺麗に洗って、そのあと、しばらく彼と一緒にあちらこちら探検した。咲き始めた白いキキョウの下でも遊んだ。

「これ、キキョウね」

「ワイフの遺品です」

「白いキキョウってめずらしいよ」

 もう数年前の話だが、ご近所の奥さんがそう言ってくれた。これから九月にかけて、例年のごとく、白い花をいっぱい咲かせるだろう。