芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「ゆすりか」132号が、津田文子さんからやって来ました。

 この詩誌には、津田文子の詩が六篇掲載されている。

 

 「ゆすりか」132号 編集・発行 五味里美 発行所 ゆすりか社 2022年4月1日発行

 

 海を捨てて地上で生きた鯨を描いた「海から上がった鯨」、この詩人が得意とする猫の世界を書いた「猫は地球に合わせて回る」、やはり得意の猫の詩「命をかけて守ったものとは」、この詩はちょっと意味深長で、猫はひょっとしたら正義のために斃れたニンゲンなのかもしれない。「握手しよう(三月)」、小学校の卒業式で好きだった男の子と別れてそれっきり、そんな感じがする詩だが、確かに人として楽しく生きるためには、あなたとわたしが握手する、ここから始まるのだろうか。

 さて、「眠れぬ夜」という作品。「何も楽しい事がない日」(本詩一行目)で夜が眠れないときは、昔の楽しかった思い出を再現したり、夜の静寂に響く雨音にじっと耳を傾けたり、それって、頭の芯から晴れて、ぐっすり眠れるのかも。最後に、「花吹雪」という作品。「激しく舞う花吹雪」(本詩一行目)とたわむれながら、人生の晩年、ふとつぶやいた言葉。以上、六篇の詩だった。

 津田文子が書いた六篇の作品は、すべて、いま、ここにある自分の世界を、スッキリ肯定した言葉が結晶していた。