芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

カアカア、その後

 カアカアは、基本的には、毎日やって来る。「基本的」と言ったのは、滅多にないことだが、たまに一日姿を見せなくても、必ず翌日には我が家のウッドフェンスの縁に立って、ご飯をオネダリする。

 一日に一回しか来ない時もあれば、多い日には五回から六回来る。最初にやって来た女のカアカアは、九ヶ月近くお付き合いしているうちに、もうずいぶん私に親しみを覚えるようになった。かなり私に接近して平気でいる。玄関から門前に向かって右側、駐車場側のウッドフェンスの上、おおよそ私から四十センチメートル内外の位置に止まって、オドケタ顔つきで私を見つめている。

 さまざまなことを私は学んだ。とりわけ、男ガラスはよく言えば慎重、裏を返せば臆病だった。まず女ガラスがやって来て、私がご飯の用意をしているとき、低声で強く呼びかける。その合図を待って、男ガラスが飛んでくる。そして、呼んでも彼がやって来ないときは、女ガラスは口にいっぱいキャットフードを詰め込んで飛び立ち、ご近所の屋根や垣根などに止まって辺りを警戒している男ガラスにそれを口移ししてるのだった。ずいぶん昔の話だが、すべての生命体の遺伝子の構造はほとんど同じようなものだ、何かの本でそんなことを読んだ記憶が、私の脳裏に残っている。カラスとニンゲンの女と男をよくよく観察すれば、誰もがみんな、成程! そう納得するだろう。

 

 愛は 決して夢ではなかった

 それはナマナマしい暮らしの中で 命をかけた

 トテモ ステキな ただひとつの贈り物だった