芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

かゾットの「猫の足」

 先日読んだカゾットの「悪魔の恋」は、「幻想と怪奇」という雑誌の創刊号と第二号に連載されたものだが、同じ著者の別の作品が「幻想と怪奇」第三号と第四号に連載されているのでご紹介しておこう。

 

 「猫の足」 カゾット作 荒井やよ訳 歳月社 「幻想と怪奇」第三号1973年9月1日発行 同第四号1973年11月1日発行

 

 カゾットの「悪魔の恋」は一七七二年、彼が五十二歳の時に発表されているが、「猫の足」は一七四一年、彼が二十一歳の時に書かれた作品で、処女作だといっていい。

 この作品は「悪魔の恋」と同じく幻想恋愛小説ではあるが、「悪魔の恋」のように人間に内在する悪魔との愛を恋愛小説風に描いたものではなく、アマディル王子とアマンディーヌという男と女の恋物語だった。アマディル王子の頑なな自己愛が妖精たちの国を放浪した苦難の末に終に消滅するとき、アマンディーヌとの愛が成就した、そんなおとぎ話風の恋愛小説だった。とても二十一歳とは思えぬ、カゾットの幻想と現実へのまなざしを私は覚えなくもなかった。