芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

「草束」39号を読む。

 山中従子さんから詩誌がやって来た。

 

 「草束 39号」 発行者 岸和田市図書館友の会 詩の教室:編集責任者 ごとう早苗 2021年4月5日発行

 

 この詩誌は、十五人の詩人の作品、十三人の同人のエッセイで構成されている。

 私は、ずいぶん昔から山中従子の作品はかなり読んできたので、今回の作品を見て少し心配した。かなり苦しんで書いている形跡を覚えた。従来の壁を突破しようとして、突破できず、もがいたに違いない、イメージに少し乱れが出ている。例えば、「人込み」は消し、「人々」じゃなくて「マネキン」でいいんじゃないか、その方がイメージに筋が通るんじゃアないか、私にはそんなふうに思えて、何度も読み返していた。ヨシッ、ならば、いっそ、山中さんには、もう充分立派な詩をこれまでに書いてきたんだから、この辺りで、グシャッと破綻した姿を出して欲しい、それを言葉で表現して欲しい、無責任な発言かも知れないが、私はそういう結論に至った。

 ごとう早苗のエッセイがとてもおもしろかった。革命家トロツキーが亡命先で出会い、また、亡命先のトロツキーを訪ねたシュルレアリストのブルトンとも付き合いのあったメキシコを代表する画家フリーダのお話だった。最後に、西瓜が出た。同時に、ごとう早苗の詩、山崎紫の詩、それぞれの独特な言語感覚を私は楽しんだ。

 エッセイで言えば、鍋谷末久美の「くまのプーさん」は、スバラシイ文章だった。特に最初の一行、「私の首の後ろには縫い目がある」、自分の首の後ろを切り開く手術を、このように表現する人、いい加減な人生を渡ってしまった私には近寄りがたい表現の人だった。