芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

トロツキーの「スペイン革命と人民戦線」

 ジョージ・オーウェルは「カタロニア讃歌」の中で、スペイン内戦の際、たまたまポウム(POUM=統一マルキスト労働党)に所属する義勇軍に参加した、そう述べている。また、ポウムの指導者アンドレス・ニンはかつてトロツキーの秘書をしており、スペイン内戦の時は既にトロツキーから離れていたというが、それでもトロツキーの「永続革命論」を支持していた、そうも言っている。従って、一九三七年のバルセロナの五月事件で、反ファシズム人民戦線で協力して闘っていたスペイン共産党ならびに共和政府に武器を売っていたスターリン率いるソヴィエト連邦の指導によるコミュニストたちから「トロツキスト」としてポウムは弾圧され、非合法組織にされ、数多くのポウム関係者が逮捕された。その中には戦線で負傷した義勇兵や子供までいたという。指導者アンドレス・ニンも逮捕され、その後、行方不明になった。おそらく獄中で銃殺されたらしい。言うまでもなく、世界革命を目指す第四インターナショナルの指導者トロツキーその人も、それから三年後、一九四〇年に亡命先メキシコでスターリンの指示による刺客に暗殺されている。

 ところで、「トロツキスト」とはいったい何だろう? ジョージ・オーウェルはこの言葉をこのように規定している。

(一)トロツキーのように、「一国における社会主義」に反対して「世界革命」を主張する人。あるいは、もっと広く、過激な革命論者。

(二)トロツキーを頭にいただく現実の組織のメンバー。

(三)革命家をよそおう変装したファシスト。ソ連邦ではとくにサボタージュによって、一般には左翼勢力を分裂させ破壊することによって活動する。(「カタロニア讃歌」筑摩叢書初版204頁)

こうした事情で、やはり、私はこの本を読んだ。

 

「スペイン革命と人民戦争」 トロツキー著 清水幾太郎・沢五郎訳 現代思潮社 1969年6月20日第一版

 

 とにかく、まだ百年もたっていない、一九二九年末のアメリカの金融恐慌から一九三〇年代の世界恐慌をもっと微細に解剖する作業が必要だろう。というのも、世界資本主義の全般的危機を前提にして、人類史上かつてない悲惨、あの第二次世界大戦が勃発した。

 私は常々思うのだが、この第二次世界大戦を資本主義社会が引き起こした事実は、後世、それが百年後か四百年後か知らないが、資本主義が人類にとっての永遠の制度ではない、それを証明する理論的基礎に必ずなるだろう。今、戦後、資本主義社会のめざましい高度経済成長の経済的繁栄によって福祉国家を目指し、一見成功しているかに見えるが、暗いカオスがやって来るに違いない。二〇世紀の第一次世界大戦ならびに第二次世界大戦を資本主義が主導した事実、そのため無数の人々が虐殺され無数の人々が障害を残して苦しみながらこの世を去りあるいは無数の人々が強制収容所で人間であることを否定されあるいはまた無数の人々がさまざまな状況の下で物体として棄損され続けてきた、この窮極の悲劇の前で、資本主義という制度は必ず崩壊する、そう言って過言ではないだろう、私にはそう思えてならない。

 確かに話は横道にそれてしまった。スペイン革命が何だと私は言おうとしていたのだろう。でも、そんなことって、もうどうでもいいじゃないか。ヨシッ! トロツキーが規定する反革命・小ブルジョアジーの私は「芦屋芸術」でトロツキーの読書会でもやろうか、いいジャンか、それも一興じゃん、今夜ゆっくり検討しようと思う。