芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

詩誌「座66号」を読む。

 津田文子さんから詩誌が送られてきた。七人の作者で合計十篇の詩が発表されている。彼女のレターによると年に四回出しているとのこと。もう十六年以上続いている計算になる。

 

「座66号」 発行者 座の会 2020年6月1日発行

 

 全体的に平明な詩で、わかりやすく、読みやすく、水が流れるように言葉が流れ、最終頁での名残惜しい別れが待っている、そういう詩誌だった。

 津田文子さんの詩は二篇収録されている。まず、「涙のように雨が降る」、この詩は輝かしかった青春時代と現在の晩年の生活の一コマとを対照して、その両面の間に、雨と涙が降り続けている、そういう味わいの詩だった。もう一篇の詩、「侘助椿がポロリと落ちる」は、時事問題を対象にして詩を書いている。安倍首相夫妻に端を発する「森友問題」で近畿財務局の職員赤木俊夫氏が自殺したのは周知の事件だが、その赤木氏の流した血を、「まっ赤な侘助椿が赤い花のまま/首からポロリと黒い土に落ちる」(最終二行)と形象化して、国家権力の末端に生きる真面目な公務員の無念を見事に表現している。