芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

最近読んだ三冊の詩誌

最近読んだ三冊の詩誌。

季刊ココア共和国 vol.9    2012年3月1日発行
さるトビ 四拾壱        2012年3月26日発行
すてむ52号          2012年4月10日発行

「ココア共和国」は秋亜綺羅の個人誌だが綺麗な装丁である。表紙から読めば縦書きで5人の詩作品が登場し最後に柏木美奈子の編集後記。

しかし裏表紙から読むと横書きで月刊「ACT」(仙台演劇研究会発行)に1年間連載した秋亜綺羅の「アート・アトランダム」7から12まで。

一言で言ってみれば、60年代でもなければ70年代でもない、「21世紀前半型」詩誌が発芽したと言っていいだろう。

「さるトビ」。こういってよければこの詩誌は田中久雄の個人誌に近いのだろう。巻頭の木村ミチの詩「饒舌ないちにち」は、朝から夜にかけて、「不在に対する理不尽な失望」(13-14行)や「失語症の夕暮れ」(21行)を語りかける相手もなく一日中語り続ける饒舌する内面劇だろう。僕には木村ミチの作品に、限られた余白の時を言葉で埋め尽くそうとする不安感さえ覚える。

「すてむ」。僕はこの詩の同人誌を最初の1行から最終行まですべて読んだ。もちろん、「ココア共和国」も「さるトビ」もそうなんだが。僕は1行から最終行まで読むのが好きなタイプで、そうしないと一切口出ししない。僕はかなり長い人生をやってきて驚くのだが、読みもしないのにわかった顔して口をきく奴がゾロゾロイルイル。けれども僕は1行から最終行まで読まなかった作品には口出ししない。沈黙する。あるいは、ゴメン全部読まなかったと正直に告白しちゃう。いやはや、思わぬところへ話がそれてしまった。

藤井章子の「戦いでいる大都会」。アメリカのポップアートの絵画作品を言葉で再構成して読んでいるのだろう。ほんの薄皮一枚の上で戦いでいる大都会は、あちらこちら歪んでいて、ベロッと剥がしたら、消滅して真空の甕の穴になるのだろう。

長嶋南子の作品「シゴト」。こういう詩って、僕はステキだと思うのだが、他の人はどう思うのかわからない。わからないからぜひ読んで欲しい。世の中にはさまざまな「死事」があるみたいだ。読んで感想きかせてください。