芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

この冬を生きることが出来た。

 昨夜、七時頃、あちらこちら雲のかたまりが空をふさいでいたが、おおよそは晴れていて、冬の星座がよく見えた。明日は夜明けの空がキレイだろう、ボクは頭の中でそうつぶやいていた。というのも、最近ずっと明け方は曇っているか、雨が降っているか、だった。確か二月の二十六日だけ、朝の五時過ぎに我が家の玄関先で、雲間から金星と月と木星が見えたが、一時間足らずでもう雲に覆われていた。
 思ったとおり、夜明け前の五時半頃、空は晴れていた。ただ、西から北の低い空には春霞のようなものがもやっていて、六甲山の山頂からしし座のレグルス辺りまで見えなくて、ぼんやりしている。
 久しぶりに、恐らく二週間ぶりくらいだろう、近くの親水公園まで出て、ボクは空を見上げた。……東から東南東の低い空に、金星、細い月、そのすぐそばに土星、木星、さそり座のアンタレス、彼等が右肩上がりに並んでいる。そして、東から北東にかけて、おりひめ星を頂点にして夏の大三角。北から西には、北斗七星、アークトゥルス、スピカが春の大曲線を描いている。
 春が来た。この冬を生きることが出来た。