芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

綺麗なものだけを……

 明け方の午前四時前、門灯を消して、表へ出た。
 東の空から北の空にわたって、春の大三角形と北斗がひらかれている。背後では冬の大三角形。もうアルデバランは西に沈んでいる。
 東の低い空は隣家の屋根で見えない。親水公園まで、ひっそりした薄闇の道を行く。そこでは、濃厚なオレンジ色の細い月と金星が、まるで抱きあうように寄りそっている。きのうの初日の出に芦屋浜まで歩いたが、七時前になっても東南東の空に彼等は薄い色をして寄りそっていた。
 五時過ぎになると、隣家の屋根の上に彼等が。北斗とカペラの間に流星が走った!
 六時過ぎ。東南東に移動した月齢二十六の細い月と金星。東の低い空に木星! 上天に近くアークトゥルスとスピカ、それに見えるか見えないか、うっすら化粧したデネボラ、まだあの春の大三角形が。そして、もうえっちゃんの星が出ている。北東の低い空に「おりひめ星」がつつましく光っている。
 思えば、綺麗なものだけを見るのが、ボクの宿命ではなかったか。