芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

シャーデヴァルトの「星のギリシア神話」

 おそらく今から四千年前か、あるいは三千年前か、無学なボクには判然しないが、人々は農耕や狩猟によって生活していただろう。いつのことかもう定かではないが、人は共同して生活し、たがいに助けあいながら労働によってそれぞれの人生をまっとうしていただろう。そして、その中からとりわけすぐれた人が出現し、その共同体を救済した。この時代、彼を人々は英雄と呼んだ。英雄はゼウスを中心とした神々に恵まれた人だった。彼は死して、天に昇り、星となった。

 「星のギリシア神話」 シャーデヴァルト著 河原忠彦訳 白水社 1966年5月10日第6版

 年末にこの本を読んだ。年の瀬にふさわしい本だった。人間の禍福、喜びと悲惨、古代ギリシアの人々の真実の物語が、夜空にちりばめられている。
 今、ここで、悲しんでいる人々、悩みに打ちひしがれている人々は、ほんのひととき、夜空を見あげて、ボクラギリシアの心の真実の物語を楽しんでください、さながらそのように語りかけながら。