芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

ふたご座流星群の方へ

 十二月十四日、夜中の十二時過ぎに、芦屋浜まで出た。我が家から徒歩で十分足らず。浜の階段状の堤防に寝転んで空を見上げた。親子連れの三人の先客がいた。
 空は晴れて、オリオンもシリウスも美しい。しばらくじっとしていると、ふたご座のポルックスとこいぬ座のプロキオンの間あたりから、流星が一秒ほどスーッと光の下線を引いた。
 風もなく、寒くもなかった。そして、なにごともなかった。ただ、ボクのあおむいた眼前の暗黒に星々が音もなく煌めいていた。
 出た! オリオン座のベテルギウスとおうし座のアルデバランの間から、かなり大きな青い火の玉状の流星がひょいと飛び出した!
 星は静かに、そのうえ賑やかに、古いギリシアの物語を、あるいはまだ記憶に新しい愛の思い出を語り始めた。
 午前一時過ぎ。六甲山の方から雲がずんずんふくらんできた。ぎょしゃ座のカペラやオリオンを覆い、ついにふたご座やプロキオンまで雲の向こう側に消えた。