芦屋芸術|同人誌・現代詩・小説

黒犬を見たり

僕等三人はレストラン「花屋敷」で遅い昼食。それから「花の島」に架かった橋を渡り、コスモスが綺麗な「大地の虹」を通り抜けて、「海のテラス」まで。

海は曇天の下、灰色にうねっている。

先程、「大地の虹」の辺りで四人連れ、若夫婦とボーダーコリー、それにダックスフントの四人だが、初めての出会いなのに、ジャックはよく遊んでいた。そして奇遇ではあるが、ホテルで再びご一緒に。

僕等は「パームガーデン」と「松の谷」の間の小路を歩き、右手の噴水の傍で休憩。傘の「し」の字になった柄を逆さにしたような噴水が高くなったり低くなったり。

「陽だまりの丘」を左手に見ながら、やがてポプラの丘を過ぎる。イタリアンポプラの林を透いて再び海が。球面に少し陽ざしが注いで青。

淡路島の国営明石海峡公園を後にして、国道28号線を岩屋方面に向かい、県道157号線を南に出て、一路、プチホテル「ハナ&キッス」へ。ついでに言っておくが、「ハナ」も「キッス」も捨てられたものたちを保護する「アーク」からいただいたワンちゃん。10月2日、日曜日午後3時着。僕等三人は、つまりジャックと家内と僕のことだが、このホテルに泊まるため、芦屋から車を飛ばして。

少し肌寒い天気だったが、おそらく水温も二十度位だろうか、ジャックと同じ黒いラブラドールが二人、イエローのラブラドールが一人、ホテルのプールで遊んでいる。ジャックはもう八歳と7ヶ月、他のラブラドールは五歳が一人、四歳が二人。若い三人に交じってジャックは泳いで。

いつもはジャックはソファやら玄関やら僕のベッドやら、まあそんなところで好き勝手に寝ているが、今夜は家内の蒲団の中。

翌日、「あわじ花さじき公園」へ。駐車場からお花畑の途中、老夫婦に会う。老夫婦といっても僕より5歳前後年上に過ぎないが。ジャックを触っていいかと言う。一年前、ジャックと同じ犬種、五歳半の黒いラブラドールの女の子を急性の乳腺癌で亡くしたと言う。紅いサルビアや虹色にアレンジされたサルビアがいちめんに咲いている。しかしコスモスはまだほとんどが莟。そういえば、昨日の「大地の虹」に咲いていたコスモスも七分咲きだった。ホテルで聞いた話だが、淡路島のコスモスは遅咲きだって。
もうひとつホテルの主人から聞いた話があった。ジャックの前の右足の腋の下に、小さな脂肪瘤があるって。僕も右手の人差指で押さえてみたら、ポッチリ、触った。どうして今まで僕は気付かなかったのだろう。過保護なくらい耳そうじや歯磨きやブラッシングをしていたのに。でも僕はそれが悪性か良性か知らない。悪性ならもちろんガンだ。